医 療 保 険 制 度 と官 僚 統 制
昭和36年から開始された国民皆保険制度は、保険証1枚で、「誰でも」、「いつでも」、「どこでも」、「必要な時に」、医療機関で診療が受けられる制度で、国民にとっては、まさに理想的なシステムと言えます。
そして、先進国で最も安い技術料・ 医療費で、世界一の実績と恩恵を国民にもたらし、今や、世界一の長寿を達成し、医療の水準を表す周産期死亡率(妊娠22週から生後1週未満の赤ちゃんの死亡率)も乳児死亡率(1年間の1才未満の赤ちゃんの死亡率)も世界一の低さを誇っています。
しかし、日本の医療制度は、全てが厚生官僚の作った政策で支配されており、資本主義・自由経済社会であるはずの日本で、官僚の絶対的な統制を受けているのは、医療以外にはなく、医療のみが唯一、国家統制、社会主義的形態で行われています。
診察・検査や薬、処置や手術の値段、入院費用などは全て全国同一料金に固定され、患者さんの自己負担の割合や毎月支払う保険料、病院の人員配置、医薬品や医療機器の認可、病室の広さから廊下の幅など、医療に関する何もかもが、全て国・官僚が決めた規則で統制されています。
全ての点数を決めた700 頁に及ぶ診療報酬点数表と厚生省通知の名のもとで行われる数多くの規制があります。厚生省の定めた2千頁にも及ぶ医科点数表の解釈の中にも疑義解釈という名の規則があり、現実の多忙な診療の場でこれら数千に及ぶ規則で、医師達はがんじがらめにされているのが実情です。
現在、診察の初診料は2700円、再診料は740
円ですが、他の諸物価を考えると病気の診断技術料の初診料・再診料の安さに驚かれるのではないでしょうか。
このような統制された制度下で、民間の医療機関は、自己資金と借金で、病院や診療所を建て、医療設備を整え、従業員を雇い、患者さんの診療を行います。
そして、毎月の患者さんに行った診察や検査や処置や手術や薬や給食を含めた入院などの全ての診療行為を、全国統一された診療報酬点数をもとに1枚のレセプトという請求用紙に1か月分をまとめて記載し、支払基金や国保連合会へ請求し、審査を受け、請求が認められた行為分の報酬が2か月後に支払われます。これが出来高払いというシステムです。
医療機関は、この支払われた診療報酬で、借金を払い、人件費・法定福利費・福利厚生費・保険料、薬品・医療材料・検査材料などの購入の支払い、税金などの公課、建物や機械の修理費、家族の生活費などを賄うわけで、従業員・家族・医師の生活の全てが、厚生省の政策に握られているわけです。
診療報酬点数は、医師の経験年数や診断や手術の上手下手などに無関係に一律ですので、制度を取り入れるに当たっては、国家統制であることも含めて、当初、先輩医師たちは反対しました。
しかし、全ての国民に公平で平等な医療を提供するという「国民皆保険制度」の理念を前に、先輩医師たちはこれを受け入れました。そして今日まで努力をされてきた結果、今日の世界に冠たる医療を完成させたともいえましょう。