心 の 健 康

高知県小児料医会 門田正坦

 心の健康な子ども達は、自己を信じ、自己を愛することができ、年齢相応に日々生き生きとすごしている子ども達ということができると思います。

 自分の在り方をよいと認めることができ、他人からもよいと認められているはずだという自らへの信頼感は、乳幼児期における最も身近な人、すなわち、母親(主たる養育者、母性的人物のことで、必ずしも母親とは限らない)との愛着(アタッチメント)関係の中から獲得します。

 愛着(アタッチメント)とは『あるひとりの人と、他の特定の人(達)との間に形成される愛情の絆であり、この両者を永遠的に結びつけるもの』と定義されています。

 乳児が乳を吸う、しがみつき、後追い、泣き声、微笑などの愛着行動を媒介にして、母親から身体的接触、揺り動かし、声掛け等の母性行動を引き起こさせる。この母子相互作用により愛着(アタッチメント)が形成され、この相互作用の量が増えるとともに、関係はより親密になり、乳児にとって生まれて初めての人間関係を形成していきます。同時に、自らの発信が、継続的に、母親の愛情のこもった適切な応答に結びついていくことは、乳児が自己に対する信頼感を獲得することにつながっていくのです。

 母親との間の安定した愛着形成ができていれば、母親を安全基地として、自分を取り巻く世界、とりわけ、人間というものに対する信頼感を子どもの心の中に作りあげていくことができるようになります。乳幼児は、新しいものに対して、好奇心と怖れ、不安とを引き起こしますが、基本的信頼感が心の奥底にしっかりと形成されておれば、愛着対象への接近行動(後退い等)により、不安や怖れを制止することができるし、好奇心により自発性や探索欲を豊かに発揮し、失敗や挫折に挫けない忍耐力と、人を愛し、協力し合いながらも、自分自身の独自性を維持できる強い心を発達させることができるのであります。

 愛着形成が充分にできていなければ、母親を安全基地として利用できないし、強い分離不安に襲われることになります。ひいては、生さ生きと遊べない等々の心の不健康な状態になってきます。

 基本的信頼感を乳児の心の中にしっかりと形成させ、同時に、子どもの発達の各段階に応じて、生活習慣の自立をはかり、社会性を養い、また、体を使って充分に遊ぶことの喜び、働くこと、他人に役立っことの意味を体験させることは非常に大切なことであります。 心の健康な子どもを育てるには、子育ての中で、母親は親としての自覚をしっかりともち、愛情いっばいに乳幼児に接することが重要であります。